天涯孤獨の素浪人狼之介はひょんなことから、荒井宿問屋場の女主人お千世に力をかすことになった。というのは、代官鈴木源內(nèi)を後楯に、七里役所の仁左衛(wèi)門が、荒井宿問屋を一手に収めようと非道の限りをつくしていたからだ。だが仁左衛(wèi)門は狼之介に対抗すべく殺し屋秋月左內(nèi)を雇った。秋月左內(nèi)は正統(tǒng)的な剣の持主だが、喧嘩剣法にもなれた邪剣の持主だ。あっちこっちでそうとうの悪事を働いたらしく、彼をつけ狙って女郎のおきぬ、親分の仇を討とうと矢車一家なども、左內(nèi)の後を追って荒井宿に入ってきていた。左內(nèi)は、一度は狼之介に挑戦したが、お千世の琴の音によって邪魔され、勝負を後日にのばした。そんな折、代官所から江戸勘定奉行に屆ける三萬両がこの宿場を通ることになった。お千世の問屋場が、この輸送の責(zé)任を隣の宿場?今井宿まで持つのだ。この金を狙って、左內(nèi)は仁左衛(wèi)門の情婦お秀と組んで橫奪りを企み、仁左衛(wèi)門は矢車一家の鬼神のお竜と組んで策をめぐらしていた。いよいよ公金三萬両運搬の日がやって來た。狼之介を先頭に三萬両をつんだ荷馬車が出発した。今井宿まであと二里というところで、左內(nèi)たちが襲いかかってきた。そして仁左衛(wèi)門の一隊もそのどさくさに毆りこんできた。亂戦の中に、お秀とお竜が死に、荷馬車は仁左衛(wèi)門に奪われた。だが、仁左衛(wèi)門が奪った荷馬車には石コロが積まれてあった。怒った仁左衛(wèi)門はお千世を誘拐、拷問にかけて三萬両のありかを白狀させようとした。そのお千世を仁左衛(wèi)門を斬って救ったのは左內(nèi)だった。五年前、武家娘だったお千世と戀仲だった左內(nèi)は許されぬ戀をお千世と駆落ちで結(jié)ぼうとしたのだったが、追手に追われた左內(nèi)とお千世は別れ別れになってしまったのだった。左內(nèi)とお千世は三萬両を持って逃げた。それを追った狼之介は、今井宿の峠に二人を追いつめた。狼之介の怒りに燃える正義の剣は、左內(nèi)を倒した。倒れた左內(nèi)のそばにお千世を殘して、狼之介は再び行く方定めぬ旅の道へと出て行くのだった。